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代々木上原のリノベーション

代々木上原のリノベーション 
 
 
初めからそこにあったように
 
1987年に竣工したマンション住戸(約50坪)のリノベーションです。
大手ゼネコンの設計施工でつくられた建築はラーメン構造のRCで、耐力壁が東西に大きく入るプランになっていました。各寝室エリアに専用の水廻りがあるなど、日本人以外にも使い勝手が良いように考えられている一方で、その住戸規模の割にはLDKのスペースの取り方に制約があるように感じました。
 
 今回の計画は、スケルトン状態に解体して再構築するということが前提だった。だからスケルトンの状態にしたときにどんな可能性があるのかという検証からスタートしました。
まず大きな制約になったのは前に触れた東西方向の耐力壁。そして、思わぬ障壁となったのは既存の配管類だった。最近では住戸内の床下で配管をして、ある場所に集約する方法が一般的ですが、ここでは床スラブに直接穴が空いていて、地中を経由して排水などの配管がなされていた(同様に上階からの配管類が天井裏を走っている)。つまりその位置を動かすことができないと言うことだ。幸いにもかなり詳細な施工図が残っていたので、それをもとに設計検証を進めることができた。もしスケジュールに余裕があれば、先に解体のみ進めてから状況を確認後、微調整をしたいところだったがそれはかなわなかった。そのためそこから先は現場の進行を見ながら調整を繰り返していくことになる。
 
リノベーションの現場は、ある意味考古学的な想像に基づく検証と、実際の状況が現れたときに時間を掛けないで対策を決断することが要求されるのです。
 ここで暮らすご家族は、ロンドン、ニューヨークと暮らす中で生活に彩りを加えてきたヨーロッパのアンティーク家具や和箪笥などを所有されています。それら家族の歴史を刻んできたモノと新たにつくる空間の間を<取り結ぶ>こと、それがデザインの上では常に意識されていたことであり、道標でした。
 玄関からLDKに行くまでの道行きは、この住戸の中で最も強く「カタチ」が現れている部分です。この空間のヒントになったのも大切にされていた和箪笥の存在でした。やや抽象化された和の要素と、西洋建築の流れからくる建築のつくりかたが交錯していきます。
 
 もう一つ意識していた大きなポイントは、明快な柱梁のラーメン構造と効率よくはまったアルミサッシュ、その抗いようのない強さを別の文脈で再構成することによって柔らかく繋ぎ直そうと考えたことです。具体的には、幅6mmの薄いエッジでそれぞれの要素を「囲い取る」こと。それは柱や梁であったり、居室の入り口であったり、上げることの出来た天井のエリアであったり…。そのまま顕していくと雑多な要素が状況の結果として出てしまったように見える部分に、統一した強くシャープなエッジを与えることでチャンスオペレーションの結果として偶然できたような「踊るライン」をつくり出すことができるのではないかと考えたのです。
それ以外のものは極力シンプルに仕上げています。そして、大切に携えてきた家具類が入り生活が始まったとき、<初めからそこにあったように>それらを包み込んでくれる空間になってほしいと思っています。

(廣部剛司)
 
  • 建築概要
  • 名称  :代々木上原のリノベーション
  • 所在地 :東京都渋谷区
  • 主要用途:集合住宅
  • 専有面積:168.0㎡(50.72坪)
  • 竣工  :2016年3月
  • 施工  :山菱工務店

 
初めからそこにあったように
 
1987年に竣工したマンション住戸(約50坪)のリノベーションです。
大手ゼネコンの設計施工でつくられた建築はラーメン構造のRCで、耐力壁が東西に大きく入るプランになっていました。各寝室エリアに専用の水廻りがあるなど、日本人以外にも使い勝手が良いように考えられている一方で、その住戸規模の割にはLDKのスペースの取り方に制約があるように感じました。
 
 今回の計画は、スケルトン状態に解体して再構築するということが前提だった。だからスケルトンの状態にしたときにどんな可能性があるのかという検証からスタートしました。
まず大きな制約になったのは前に触れた東西方向の耐力壁。そして、思わぬ障壁となったのは既存の配管類だった。最近では住戸内の床下で配管をして、ある場所に集約する方法が一般的ですが、ここでは床スラブに直接穴が空いていて、地中を経由して排水などの配管がなされていた(同様に上階からの配管類が天井裏を走っている)。つまりその位置を動かすことができないと言うことだ。幸いにもかなり詳細な施工図が残っていたので、それをもとに設計検証を進めることができた。もしスケジュールに余裕があれば、先に解体のみ進めてから状況を確認後、微調整をしたいところだったがそれはかなわなかった。そのためそこから先は現場の進行を見ながら調整を繰り返していくことになる。
 
リノベーションの現場は、ある意味考古学的な想像に基づく検証と、実際の状況が現れたときに時間を掛けないで対策を決断することが要求されるのです。
 ここで暮らすご家族は、ロンドン、ニューヨークと暮らす中で生活に彩りを加えてきたヨーロッパのアンティーク家具や和箪笥などを所有されています。それら家族の歴史を刻んできたモノと新たにつくる空間の間を<取り結ぶ>こと、それがデザインの上では常に意識されていたことであり、道標でした。
 玄関からLDKに行くまでの道行きは、この住戸の中で最も強く「カタチ」が現れている部分です。この空間のヒントになったのも大切にされていた和箪笥の存在でした。やや抽象化された和の要素と、西洋建築の流れからくる建築のつくりかたが交錯していきます。
 
 もう一つ意識していた大きなポイントは、明快な柱梁のラーメン構造と効率よくはまったアルミサッシュ、その抗いようのない強さを別の文脈で再構成することによって柔らかく繋ぎ直そうと考えたことです。具体的には、幅6mmの薄いエッジでそれぞれの要素を「囲い取る」こと。それは柱や梁であったり、居室の入り口であったり、上げることの出来た天井のエリアであったり…。そのまま顕していくと雑多な要素が状況の結果として出てしまったように見える部分に、統一した強くシャープなエッジを与えることでチャンスオペレーションの結果として偶然できたような「踊るライン」をつくり出すことができるのではないかと考えたのです。
それ以外のものは極力シンプルに仕上げています。そして、大切に携えてきた家具類が入り生活が始まったとき、<初めからそこにあったように>それらを包み込んでくれる空間になってほしいと思っています。

(廣部剛司)
 

建築概要
名称  :代々木上原のリノベーション
所在地 :東京都渋谷区
主要用途:集合住宅
専有面積:168.0㎡(50.72坪)
竣工  :2016年3月
施工  :山菱工務店

Photo
@Koichi Torimura

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