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YMK

それまでの日常をつないだまま、高原に暮らす。 

 
コロナ禍になってから、都内のマンションでの在宅勤務でも業務に支障がないと気付かれたデザイナーご夫婦は、リモートでの仕事を前提にして、 いち早く軽井沢の地に土地を求められた。 軽井沢の中でも、別荘だけではなく定住者が多いこのエリアには、緑も豊富に残っている。 さらに、前オーナーが別荘を建てたときに植えられたと思われるモミジの大木が解体前の建物に寄り添うように繁っていた。そのため、これらのモミジは切らないように配置していくことが設計の出発点となった。
 
敷地は道路側である西側から東側にかけて、緩やかな傾斜で連続しており、その向こうで一気に下がっている。その下には小川が流れ、小さな谷を形成していた。そのため、谷越しの隣家とはかなりの距離があり、谷側に抜ける視線には樹木が深く折り重なるように続いていた。 建物の南東の角には面が取られ、大きなピクチャーウインドウがあるが、 その行く先はこのような環境の読み取りから決定された。 軽井沢は夏涼しく爽やかな気候となるが、冬になるとマイナス10度 以上に気温が下がる寒冷地である。そのため、建物の基礎は凍結深度以下に設置する必要が生じる。独立基礎を単独で掘り下げて設けている部分もあるが、ここでは凍結深度以下に躯体を掘り下げて、その部分を積極的に有効活用しようとしている。本格的なビリヤード台を設置したいというご要望は、この+αとして想定された地盤面以下の部分によってクリアされている。 

冬の寒さへの対策として、この住宅では床下に大量の「水」を封入した蓄熱体を設ける事で応えている。 1日のなかでの温度変化を、蓄熱体が吸収することで熱的な定常状態をつくり、2台のヒートポンプエアコンによっての24時間空調を想定している。薪ストーブも熱源としては活用され、外気を取り入れた方が気持ちの良い時期は、温度変化のみを蓄熱体が抑える働きをする。なお、先に説明した凍結深度以下の躯体も蓄熱体の一部として機能する。 建物の中心付近にある木造トラスによる耐力壁は、ウッドショックで流通材の確保が難しい状況のなか、構造に一般的に使われる寸法ではない材料で構造の一部を支えることができないだろうか、というアイディアから 生まれたものだ。構造家の荒木美香さんとのディスカッションを繰り返し ながら、主たる見付寸法60mm、斜材は45mmと30mmという非常にスレンダーな部材での構造壁が実現している。 構造体でありながらインテリアにも参加していくような繊細さが 空間に挿入されることで、生まれるスケールの感じ方があるのではないかと考えていた。 樹木を切らずに敷地に対してのフットプリントを小さくしたことも影響しているが、建物の断面構成はかなり複雑に構成されている。建物としては 「2階建て」だが、フロアのレベルは5つもあるのだ。 そのうえで、それぞれの空間ができるだけバラバラにならないように空間 としては繋ぎとめていくことに、先の構造的な解決も一役買っている。 生活を支えるそれぞれの空間や構成要素は、クライアントとの綿密な積み上げによってつくりあげられていったものである。


できあがった空間 をあらためてみていると、ふとご家族のポートレートのように感じる瞬間がある。

(廣部剛司) 

 
 
建築概要
名称  :YMK
所在地 :神奈川県軽井沢
主要用途:専用住宅
主体構造:木造
規模  :地上2階
敷地面積:1841.74㎡(557.12坪)
建築面積:133.43㎡(40.28坪)
延床面積:205.53㎡(62.05坪)
竣工  :2022年9月 
構造設計:荒木美香構造設計事務所
施工  :ハピアデザイン

それまでの日常をつないだまま、高原に暮らす。 
 
コロナ禍になってから、都内のマンションでの在宅勤務でも業務に支障がないと気付かれたデザイナーご夫婦は、リモートでの仕事を前提にして、 いち早く軽井沢の地に土地を求められた。 軽井沢の中でも、別荘だけではなく定住者が多いこのエリアには、緑も豊富に残っている。 さらに、前オーナーが別荘を建てたときに植えられたと思われるモミジの大木が解体前の建物に寄り添うように繁っていた。そのため、これらのモミジは切らないように配置していくことが設計の出発点となった。
 
敷地は道路側である西側から東側にかけて、緩やかな傾斜で連続しており、その向こうで一気に下がっている。その下には小川が流れ、小さな谷を形成していた。そのため、谷越しの隣家とはかなりの距離があり、谷側に抜ける視線には樹木が深く折り重なるように続いていた。 建物の南東の角には面が取られ、大きなピクチャーウインドウがあるが、 その行く先はこのような環境の読み取りから決定された。 軽井沢は夏涼しく爽やかな気候となるが、冬になるとマイナス10度 以上に気温が下がる寒冷地である。そのため、建物の基礎は凍結深度以下に設置する必要が生じる。独立基礎を単独で掘り下げて設けている部分もあるが、ここでは凍結深度以下に躯体を掘り下げて、その部分を積極的に有効活用しようとしている。本格的なビリヤード台を設置したいというご要望は、この+αとして想定された地盤面以下の部分によってクリアされている。 

冬の寒さへの対策として、この住宅では床下に大量の「水」を封入した蓄熱体を設ける事で応えている。 1日のなかでの温度変化を、蓄熱体が吸収することで熱的な定常状態をつくり、2台のヒートポンプエアコンによっての24時間空調を想定している。薪ストーブも熱源としては活用され、外気を取り入れた方が気持ちの良い時期は、温度変化のみを蓄熱体が抑える働きをする。なお、先に説明した凍結深度以下の躯体も蓄熱体の一部として機能する。 建物の中心付近にある木造トラスによる耐力壁は、ウッドショックで流通材の確保が難しい状況のなか、構造に一般的に使われる寸法ではない材料で構造の一部を支えることができないだろうか、というアイディアから 生まれたものだ。構造家の荒木美香さんとのディスカッションを繰り返し ながら、主たる見付寸法60mm、斜材は45mmと30mmという非常にスレンダーな部材での構造壁が実現している。 構造体でありながらインテリアにも参加していくような繊細さが 空間に挿入されることで、生まれるスケールの感じ方があるのではないかと考えていた。 樹木を切らずに敷地に対してのフットプリントを小さくしたことも影響しているが、建物の断面構成はかなり複雑に構成されている。建物としては 「2階建て」だが、フロアのレベルは5つもあるのだ。 そのうえで、それぞれの空間ができるだけバラバラにならないように空間 としては繋ぎとめていくことに、先の構造的な解決も一役買っている。 生活を支えるそれぞれの空間や構成要素は、クライアントとの綿密な積み上げによってつくりあげられていったものである。


できあがった空間 をあらためてみていると、ふとご家族のポートレートのように感じる瞬間がある。

(廣部剛司) 

 
 
建築概要
名称  :YMK
所在地 :神奈川県軽井沢
主要用途:専用住宅
主体構造:木造
規模  :地上2階
敷地面積:1841.74㎡(557.12坪)
建築面積:133.43㎡(40.28坪)
延床面積:205.53㎡(62.05坪)
竣工  :2022年9月 
構造設計:荒木美香構造設計事務所
施工  :ハピアデザイン

Photo
@Koichi Torimura

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