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国際科学博物館ルーフトップテラス  
眺望   事業系

 
国立科学博物館ルーフトップテラス
 
 
基本的な経緯と建築の特徴
 
国立科学博物館は、長年にわたって増築を重ねていましたが、歴史的に価値の高い本館を残し、それ以外の建築を新たにつくる新館に集約するべく、改築していく計画が立てられました。
(本館は後に香山事務所によりリノベーションされている)
芦原建築設計研究所在籍時(1991〜1998)に、最後の2年間この現場の監理責任者として常駐していたため、1期工事に関してはディテールに至るまで関わらせて頂いた。
 
 芦原建築設計研究所が手掛けた新館の建設は2期に渡って行われました。それは、既存建築のエネルギーセンターを担っていた4号館を残し、新規に建てる新館の屋上にいったん設備機器類を設けることで既存の展示室機能を維持したまま、次の段階で建て替えていくためでもありました。そのため、新館の1期工事部分の屋上には機械基礎が、かなりの数設置されていた。(現在はその上にハーブガーデンが設けられています)
 
 建築の大きな特徴は、実は断面計画にあります。
博物館の性質上、大きなボリュームの展示スペースが必要とされており、それを地上に設けるにはかなり高層の建築となってしまう。そのため地下を約30m掘り、必要なボリュームを取りながら建築の高さを抑えた計画となっている。階高10mの展示室がGLを挟んで2層、階高7mの展示室が2層設けられている。
それだけの地下工事をしてボリュームを抑えた科学博物館ですが、上野公園の中ではかなり高い視点を持つ屋上となっています。
 
 1期工事完了時は設備機器があり、動線も1方向しか取れなかった関係で、屋上をパブリックに開くと言うことは2期工事以降に委ねられていました。ただ、高い視点を持つということのポテンシャルは、現場に常駐していたときから感じていたことです。
 
 科学博物館より検討依頼を受けた仲俊治氏が、屋上の現況分析を行い、いくつかの方向性を示していくなかで、屋上がより「使われる」場所になるように舵が取られていきました。
弊社が参画するのは、その方針が決まってからですので、第三者的な視点で分析されたという利点が、決定案には大きく反映されています。
 
 屋上空間を分断してしまっていた太陽光発電を撤去し、大きなオープンスペースをつくるにあたって、機械基礎をどう再利用するのかということ、既存の動線とどう繋ぐのかということがかなりシビアな精度で検討された。その結果、少し上がった床面とそれを繋ぐためのゆるやかなスロープが生まれた。スロープは段差解消のための手段でもあるが、シエナのカンポ広場にあるようにそれ自体が「居場所」となることも期待して計画されている。
 
 スロープを降りたところに設けられたステージとパーゴラは、既存の大きな機械基礎を覆うように考えられており、スロープを客席に見立ててイベントも行えるようにという意図が込められている。
 
 一つのパーゴラは、それとは違い「窓」の役割を持たせています。
幅約17.5mの全面に、合わせガラスを嵌めて、ポテンシャルとしては持っていた上野公園を見下ろす視点を提供します。パーゴラの反対側にある大階段からも公園やその先の風景にむけて視線が抜けていきます。
 
 公園と空に向けて大きく開かれたスペースは、展示スペースとは対照的に自然と対峙する場所となります。その場所に様々な時間帯に渡って、様々な層の人々が訪れることで自然科学について考えることのリアリティが増すのではないかと感じます。
また、この場所ができることで科学博物館の使われ方も、可能性が広がっていくのではないかと考えています。
 
 
 

(廣部剛司)

 
 
建築概要
名  称 :国立科学博物館ルーフトップテラス
統  括 :国立科学博物館 施設整備主幹
基本計画 :仲建築設計スタジオ
実施設計 :廣部剛司建築研究所
工事監理 :仲建築設計スタジオ
施  工 :エム・テック
竣工   :2016年3月

 
基本的な経緯と建築の特徴
 
国立科学博物館は、長年にわたって増築を重ねていましたが、歴史的に価値の高い本館を残し、それ以外の建築を新たにつくる新館に集約するべく、改築していく計画が立てられました。
(本館は後に香山事務所によりリノベーションされている)
芦原建築設計研究所在籍時(1991〜1998)に、最後の2年間この現場の監理責任者として常駐していたため、1期工事に関してはディテールに至るまで関わらせて頂いた。
 
 芦原建築設計研究所が手掛けた新館の建設は2期に渡って行われました。それは、既存建築のエネルギーセンターを担っていた4号館を残し、新規に建てる新館の屋上にいったん設備機器類を設けることで既存の展示室機能を維持したまま、次の段階で建て替えていくためでもありました。そのため、新館の1期工事部分の屋上には機械基礎が、かなりの数設置されていた。(現在はその上にハーブガーデンが設けられています)
 
 建築の大きな特徴は、実は断面計画にあります。
博物館の性質上、大きなボリュームの展示スペースが必要とされており、それを地上に設けるにはかなり高層の建築となってしまう。そのため地下を約30m掘り、必要なボリュームを取りながら建築の高さを抑えた計画となっている。階高10mの展示室がGLを挟んで2層、階高7mの展示室が2層設けられている。
それだけの地下工事をしてボリュームを抑えた科学博物館ですが、上野公園の中ではかなり高い視点を持つ屋上となっています。
 
 1期工事完了時は設備機器があり、動線も1方向しか取れなかった関係で、屋上をパブリックに開くと言うことは2期工事以降に委ねられていました。ただ、高い視点を持つということのポテンシャルは、現場に常駐していたときから感じていたことです。
 
 科学博物館より検討依頼を受けた仲俊治氏が、屋上の現況分析を行い、いくつかの方向性を示していくなかで、屋上がより「使われる」場所になるように舵が取られていきました。
弊社が参画するのは、その方針が決まってからですので、第三者的な視点で分析されたという利点が、決定案には大きく反映されています。
 
 屋上空間を分断してしまっていた太陽光発電を撤去し、大きなオープンスペースをつくるにあたって、機械基礎をどう再利用するのかということ、既存の動線とどう繋ぐのかということがかなりシビアな精度で検討された。その結果、少し上がった床面とそれを繋ぐためのゆるやかなスロープが生まれた。スロープは段差解消のための手段でもあるが、シエナのカンポ広場にあるようにそれ自体が「居場所」となることも期待して計画されている。
 
 スロープを降りたところに設けられたステージとパーゴラは、既存の大きな機械基礎を覆うように考えられており、スロープを客席に見立ててイベントも行えるようにという意図が込められている。
 
 一つのパーゴラは、それとは違い「窓」の役割を持たせています。
幅約17.5mの全面に、合わせガラスを嵌めて、ポテンシャルとしては持っていた上野公園を見下ろす視点を提供します。パーゴラの反対側にある大階段からも公園やその先の風景にむけて視線が抜けていきます。
 
 公園と空に向けて大きく開かれたスペースは、展示スペースとは対照的に自然と対峙する場所となります。その場所に様々な時間帯に渡って、様々な層の人々が訪れることで自然科学について考えることのリアリティが増すのではないかと感じます。
また、この場所ができることで科学博物館の使われ方も、可能性が広がっていくのではないかと考えています。
 
 
 

(廣部剛司)

 
 
建築概要
名  称 :国立科学博物館ルーフトップテラス
統  括 :国立科学博物館 施設整備主幹
基本計画 :仲建築設計スタジオ
実施設計 :廣部剛司建築研究所
工事監理 :仲建築設計スタジオ
施  工 :エム・テック
竣工   :2016年3月

Photo
@Koichi Torimura