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南青山の家
  天窓   坪庭   庭に開く

南青山の家
 
 
 自由な振る舞い
 
 建築として成立するために必要な要素がある。それらが組み合わされていくことで建築としての必要条件を成立させていく訳だが、なかでも住宅はスケール感と要件が高密度に関連していく。ここで考えていたことはその要件にリズムを与えて「自由な振る舞い」をさせることだった。それを受け入れるためには技術面でのサポートも不可欠なのだが、そんなプランニングを希求した理由の1つにこの住宅の立地する厳しい敷地条件があった。
 
 都心の密集した住宅地。もともとはひとつの大きな区画であったところが4つに分けられて売りに出された袋小路の突き当たりである。接道もギリギリで区画された敷地はそれだけで厳しい設計条件をもたらした。30坪弱の敷地で建ぺい率が60%。単体の建物を60%の範囲内で建てて、残りを余白として計画することは、3階建ての住宅が密集する周辺環境が許さなかった。そこで、RCのボリュームで敷地を囲い取るようにしてから、大小2カ所の庭を「くり抜く」というところから検討を始めることにした。また、ガレージも必要だったので利便性を犠牲にしないために上部2層をオーバーハングさせて無柱のピロティ空間としている。こうして建物の外形が決まっていった。
 
 中庭をつくったことで各階は常に外部に繋がることができるが、さらに生活空間を上下につなぐことで、中庭がもたらしてくれる繋がりのほかに、「人が動いていくこと」で生まれる内部の連続感(リズム感)を生みだそうとしている。ここでは3つの階段にその役を演じてもらうことにした。あえて連続した階段とせずに<乗り換える>原則を与えることで、1階から2階までは「地面からつながるもの」として重量感を与え、階高が高いことからも大きな存在感を持つ2階から3階部分を「空に向かうもの」。3階から屋上に至る小さめの廻り階段を「空につながるもの」として性格づけた。階段を納めるためにあけられる空間に、ほんの少しの余白を持たせることで、意識だけではなく空間的にも上下を繋げようとしている。そして、その階段室を貫くように黄色いガラスブロックを挟み込んだスリットをあけた。
 
 2つの庭、そして階段廻りの切り込みを入れていったことで、3階の床スラブは外周の壁との接点をなくしていった。結果として2階の天井に現れた形は「まるで竜骨のようだ」と喜んでもみたが、構造的にはかなりの負担となったため、寝室の横で屋上の梁から吊ることになった。では、そこにも形と機能を与えよう…と、細い吊り材に揺らぎを持たせ、手摺を兼ねることにした。ガラスブロックのスリットも実はガレージ上部のオーバーハングを引っ張る必要があるため、目地部分に引っ張り鉄筋を仕込むという工夫によってはじめて実現している。
 
 日中は2つの庭のからの光、階段上部のトップライトからの光が、密集地である事をひととき忘れさせるような明るさで射し込み、夕方になって来ると黄色いガラスブロックが徐々にオレンジに変わっていく。周囲の状況と方位を研究することで設定した開口部。それがもたらしてくれる空間の色が時間帯によって徐々に変わることを「毎日の物語」として建築に織り込んでいるのだ。
  光の振る舞い、階段の振る舞い、その廻りに配置された諸機能、それらが何の脈絡もないように(実際は緻密に)「自由に振る舞う」ことによって、ゆるやかな余白を生み出していくこと。それが厳しい敷地条件におかれていても「自由な時空間」を感じさせる生活の糸口になるのではないかと思っている。
 
 

 (廣部剛司)

 
 
 
 
建築概要
名称  :南青山の家
所在地 :東京都港区
主要用途:専用住宅
主体構造:RC造
規模  :地上3階
敷地面積: 96.07m2(29.1坪)
建築面積: 54.35m2(16.4坪)
延床面積:138.69m2(41.9坪)
竣工  :2005年4月
 
構造設計:エスフォルム/大内彰
施工  :株式会社 sobi
 

 
 自由な振る舞い
 
 建築として成立するために必要な要素がある。それらが組み合わされていくことで建築としての必要条件を成立させていく訳だが、なかでも住宅はスケール感と要件が高密度に関連していく。ここで考えていたことはその要件にリズムを与えて「自由な振る舞い」をさせることだった。それを受け入れるためには技術面でのサポートも不可欠なのだが、そんなプランニングを希求した理由の1つにこの住宅の立地する厳しい敷地条件があった。
 
 都心の密集した住宅地。もともとはひとつの大きな区画であったところが4つに分けられて売りに出された袋小路の突き当たりである。接道もギリギリで区画された敷地はそれだけで厳しい設計条件をもたらした。30坪弱の敷地で建ぺい率が60%。単体の建物を60%の範囲内で建てて、残りを余白として計画することは、3階建ての住宅が密集する周辺環境が許さなかった。そこで、RCのボリュームで敷地を囲い取るようにしてから、大小2カ所の庭を「くり抜く」というところから検討を始めることにした。また、ガレージも必要だったので利便性を犠牲にしないために上部2層をオーバーハングさせて無柱のピロティ空間としている。こうして建物の外形が決まっていった。
 
 中庭をつくったことで各階は常に外部に繋がることができるが、さらに生活空間を上下につなぐことで、中庭がもたらしてくれる繋がりのほかに、「人が動いていくこと」で生まれる内部の連続感(リズム感)を生みだそうとしている。ここでは3つの階段にその役を演じてもらうことにした。あえて連続した階段とせずに<乗り換える>原則を与えることで、1階から2階までは「地面からつながるもの」として重量感を与え、階高が高いことからも大きな存在感を持つ2階から3階部分を「空に向かうもの」。3階から屋上に至る小さめの廻り階段を「空につながるもの」として性格づけた。階段を納めるためにあけられる空間に、ほんの少しの余白を持たせることで、意識だけではなく空間的にも上下を繋げようとしている。そして、その階段室を貫くように黄色いガラスブロックを挟み込んだスリットをあけた。
 
 2つの庭、そして階段廻りの切り込みを入れていったことで、3階の床スラブは外周の壁との接点をなくしていった。結果として2階の天井に現れた形は「まるで竜骨のようだ」と喜んでもみたが、構造的にはかなりの負担となったため、寝室の横で屋上の梁から吊ることになった。では、そこにも形と機能を与えよう…と、細い吊り材に揺らぎを持たせ、手摺を兼ねることにした。ガラスブロックのスリットも実はガレージ上部のオーバーハングを引っ張る必要があるため、目地部分に引っ張り鉄筋を仕込むという工夫によってはじめて実現している。
 
 日中は2つの庭のからの光、階段上部のトップライトからの光が、密集地である事をひととき忘れさせるような明るさで射し込み、夕方になって来ると黄色いガラスブロックが徐々にオレンジに変わっていく。周囲の状況と方位を研究することで設定した開口部。それがもたらしてくれる空間の色が時間帯によって徐々に変わることを「毎日の物語」として建築に織り込んでいるのだ。
  光の振る舞い、階段の振る舞い、その廻りに配置された諸機能、それらが何の脈絡もないように(実際は緻密に)「自由に振る舞う」ことによって、ゆるやかな余白を生み出していくこと。それが厳しい敷地条件におかれていても「自由な時空間」を感じさせる生活の糸口になるのではないかと思っている。
 
 

 (廣部剛司)

 
 
 
 
建築概要
名称  :南青山の家
所在地 :東京都港区
主要用途:専用住宅
主体構造:RC造
規模  :地上3階
敷地面積: 96.07m2(29.1坪)
建築面積: 54.35m2(16.4坪)
延床面積:138.69m2(41.9坪)
竣工  :2005年4月
 
構造設計:エスフォルム/大内彰
施工  :株式会社 sobi
 

Photo
@Hiro Sakaguchi
@Takeshi Hirobe

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