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国立の奏楽居
音楽   コレクション          天窓   スタジオ

国立の奏楽居  

 
初めて敷地を訪れた時、庭に残る樹木に心惹かれた。
 
それは、前オーナーによって丁寧に積み上げられた時間を感じる佇まいだったのだ。そのため、基本的には庭の樹木は残す方向で設計が進行していった。なかでも大きな榎木(エノキ)の古木を残すことは、プランにも影響を与えている。
 
この住宅はクラッシック音楽を愛する住み手が、若い音楽家達のために演奏・録音、映像収録ができるように…ということを意図して設計されている。そのため2階にあるリビングルームは居間と言うよりは,演奏をする場所としてふさわしい「響き」が優先された。天井高は4mを超える部分もあり、木部の構造体は音を拡散するエレメントとしても想定されていった。大きな壁面となる南側の壁には反響を自然にするために角度をつけてあり、その壁の内側には遮音性能を高めるために吹き込みの断熱材が充填されている。比較的、開口部の面積が抑えられているのも遮音性能と響きを意識してのことだ。
 
このように響きを優先してつくられた空間ではあるが、結果として立ち上がった大きな空間は、遮音のために配慮したことによって、結果的にかなり高気密・高断熱の場となった。熱損失の大きい開口部が控えめである事もあり、快適な室温を保つためのエネルギー消費は抑えられることになったのだ。
リビングにある窓で一番面積が大きいのはダイニングに近い窓である。実はこの窓は冒頭に挙げた榎木の古木に対して開くことを意図して開けた開口部である。
 
外壁に近いところを枝払いして、開口部を設けたことによって樹木の中に入り込んだような感覚を得ることが出来ている。それはまるで、木登りをした時に内側から見た樹木のようだ。
 
2階から地下の間にはかなりの本数の配線が仕込まれている。それは地下室にオーディオルームを兼ねた音響調整ブースが設けられているからだ。音声だけではなく映像も高品質に届けるための設備が施されている。
 
近年コンクールを受ける若い音楽家は、予備審査として映像提出が求められることが増えている。そんな時に、住居としてつくった建築が手助けをすることができるように。その思いを共有しながら完成に導いた住宅であった。
 

(廣部剛司)
 
 

建築概要
名称  :国立の奏楽居
所在地 :東京都国立市
主要用途:専用住宅
主体構造:木造、一部RC造(地下)
規模  :地下1階、地上2階
敷地面積:357.19㎡(107.83坪)
建築面積:91.92㎡(27.75坪)
延床面積:211.82㎡(63.95坪)
竣工  :2020年3月 
構造設計:株式会社 匠陽
施工  :株式会社 匠陽

 
初めて敷地を訪れた時、庭に残る樹木に心惹かれた。
 
それは、前オーナーによって丁寧に積み上げられた時間を感じる佇まいだったのだ。そのため、基本的には庭の樹木は残す方向で設計が進行していった。なかでも大きな榎木(エノキ)の古木を残すことは、プランにも影響を与えている。
 
この住宅はクラッシック音楽を愛する住み手が、若い音楽家達のために演奏・録音、映像収録ができるように…ということを意図して設計されている。そのため2階にあるリビングルームは居間と言うよりは,演奏をする場所としてふさわしい「響き」が優先された。天井高は4mを超える部分もあり、木部の構造体は音を拡散するエレメントとしても想定されていった。大きな壁面となる南側の壁には反響を自然にするために角度をつけてあり、その壁の内側には遮音性能を高めるために吹き込みの断熱材が充填されている。比較的、開口部の面積が抑えられているのも遮音性能と響きを意識してのことだ。
 
このように響きを優先してつくられた空間ではあるが、結果として立ち上がった大きな空間は、遮音のために配慮したことによって、結果的にかなり高気密・高断熱の場となった。熱損失の大きい開口部が控えめである事もあり、快適な室温を保つためのエネルギー消費は抑えられることになったのだ。
リビングにある窓で一番面積が大きいのはダイニングに近い窓である。実はこの窓は冒頭に挙げた榎木の古木に対して開くことを意図して開けた開口部である。
 
外壁に近いところを枝払いして、開口部を設けたことによって樹木の中に入り込んだような感覚を得ることが出来ている。それはまるで、木登りをした時に内側から見た樹木のようだ。
 
2階から地下の間にはかなりの本数の配線が仕込まれている。それは地下室にオーディオルームを兼ねた音響調整ブースが設けられているからだ。音声だけではなく映像も高品質に届けるための設備が施されている。
 
近年コンクールを受ける若い音楽家は、予備審査として映像提出が求められることが増えている。そんな時に、住居としてつくった建築が手助けをすることができるように。その思いを共有しながら完成に導いた住宅であった。
 

(廣部剛司)
  

建築概要
名称  :国立の奏楽居
所在地 :東京都国立市
主要用途:専用住宅
主体構造:木造、一部RC造(地下)
規模  :地下1階、地上2階
敷地面積:357.19㎡(107.83坪)
建築面積:91.92㎡(27.75坪)
延床面積:211.82㎡(63.95坪)
竣工  :2020年3月 
構造設計:株式会社 匠陽
施工  :株式会社 匠陽

Photo
@Koichi Torimura