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Gray ravine(グレー・ラヴィーン)

Gray ravine(グレー・ラヴィーン)
 
 
 どこまでも続く砂漠の一本道をひたすら運転しながら、ウィンドウの向こうにどこまでも続く地平線を眺めていた。それを切り裂くような大地の裂け目。そんな場所に先住民の集落「メサ・ヴァーデ」はあります。その立地ゆえに19世紀後半まで発見されなかった遺跡。そこは峡谷に面して彫り込まれ、石を積んでつくられた集落。天然の大屋根の下、入れ子のように組積造の集落がある様子をみて「守られ」かつ「地球に開かれている」と感じていた。
 
 この住宅に設けられた坪庭とそれに続く階段室は、厳しい敷地条件の中で地球からの情報を受け取るために試行錯誤の末、導き出したもの。ギリギリの寸法関係を調停するためにも有効であった曲面壁が外部からの光をバウンドさせ、グレーの壁面に反射されながら柔らかく落ちてくる。
 
東西に抜けてつくられている階段室は、日の出から日没まで、太陽の動きを敏感に映してくれる。
その空間に、各居室が「外部に開くように」面している。その構成を考えていたときに、脳裏に浮かんでいたのが「メサ・ヴァーデ」だった。だからグレーの峡谷という意味の「Gray ravine(グレー・ラヴィーン)」と名付けることとした。
 
 住宅に囲まれた26坪の敷地に家族4人のための住居をつくる。かなり多い蔵書、時間を掛けて集めた家具や照明器具…。じっくりと生活と建築の関係を取り結びつつ設計を進めていった。北側からの一種高度斜線が掛かるため、高さ方向はかなりシビアな検討が必要、1階のLDKレベルを少し下げているのも最初は天井高さを確保するための検討だった。しかし、床を少し下げることで家の中の路地のように想定していた階段部分と居室の間に段差ができ、自然に居場所(座る場所)が生まれた。反対側の壁にはダイニングの椅子として機能するベンチがそのまま延長されてTV台になり、余白は座る場所となる。
 
椅子やソファも置かれる想定ではあるけれど、建築の設えとしての「居場所」が絶対的な空間の小ささを補完してくれる。「その先がある」と感じさせる連続性と、そういった居場所のつくり方を通して、小さいけれど豊かな空間を目指して設計した住宅です。
 
 グレーの空間は、見かけ上の光とは違う光で満たされている。そこに人が入り、大切にしているモノが置かれ…としていくうちに、その光を受け止め、柔らかさが出てくるだろうと思っている。
 

(廣部剛司)

 
 
建築概要
名称  :Gray ravine(グレー・ラヴィーン)
所在地 :東京都目黒区
主要用途:専用住宅
主体構造:木造
規模  :地上2階
敷地面積:79.40㎡(坪)
建築面積:47.15㎡(坪)
延床面積:87.46㎡(26.46坪)
竣工  :2015年11月 
構造設計:エスフォルム/大内彰
施工  :山菱工務店

 
 どこまでも続く砂漠の一本道をひたすら運転しながら、ウィンドウの向こうにどこまでも続く地平線を眺めていた。それを切り裂くような大地の裂け目。そんな場所に先住民の集落「メサ・ヴァーデ」はあります。その立地ゆえに19世紀後半まで発見されなかった遺跡。そこは峡谷に面して彫り込まれ、石を積んでつくられた集落。天然の大屋根の下、入れ子のように組積造の集落がある様子をみて「守られ」かつ「地球に開かれている」と感じていた。
 
 この住宅に設けられた坪庭とそれに続く階段室は、厳しい敷地条件の中で地球からの情報を受け取るために試行錯誤の末、導き出したもの。ギリギリの寸法関係を調停するためにも有効であった曲面壁が外部からの光をバウンドさせ、グレーの壁面に反射されながら柔らかく落ちてくる。
 
東西に抜けてつくられている階段室は、日の出から日没まで、太陽の動きを敏感に映してくれる。
その空間に、各居室が「外部に開くように」面している。その構成を考えていたときに、脳裏に浮かんでいたのが「メサ・ヴァーデ」だった。だからグレーの峡谷という意味の「Gray ravine(グレー・ラヴィーン)」と名付けることとした。
 
 住宅に囲まれた26坪の敷地に家族4人のための住居をつくる。かなり多い蔵書、時間を掛けて集めた家具や照明器具…。じっくりと生活と建築の関係を取り結びつつ設計を進めていった。北側からの一種高度斜線が掛かるため、高さ方向はかなりシビアな検討が必要、1階のLDKレベルを少し下げているのも最初は天井高さを確保するための検討だった。しかし、床を少し下げることで家の中の路地のように想定していた階段部分と居室の間に段差ができ、自然に居場所(座る場所)が生まれた。反対側の壁にはダイニングの椅子として機能するベンチがそのまま延長されてTV台になり、余白は座る場所となる。
 
椅子やソファも置かれる想定ではあるけれど、建築の設えとしての「居場所」が絶対的な空間の小ささを補完してくれる。「その先がある」と感じさせる連続性と、そういった居場所のつくり方を通して、小さいけれど豊かな空間を目指して設計した住宅です。
 
 グレーの空間は、見かけ上の光とは違う光で満たされている。そこに人が入り、大切にしているモノが置かれ…としていくうちに、その光を受け止め、柔らかさが出てくるだろうと思っている。
 

(廣部剛司)

 
 
建築概要
名称  :Gray ravine(グレー・ラヴィーン)
所在地 :東京都目黒区
主要用途:専用住宅
主体構造:木造
規模  :地上2階
敷地面積:79.40㎡(坪)
建築面積:47.15㎡(坪)
延床面積:87.46㎡(26.46坪)
竣工  :2015年11月 
構造設計:エスフォルム/大内彰
施工  :山菱工務店

Photo
@Koichi Torimura
@Takeshi Hirobe