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名取の多角形住居
都市住宅  中庭   庭に開く   天窓   

名取の多角形住居
 

「包む」空間を求めて


 敷地は宮城県名取市の市街地、敷地そのものは大きいが、まわりを住宅に囲まれた旗竿形状である。
 
まず日常生活に必要とされる駐車スペースを最低2台分設け、旗竿敷地ゆえに、頭からクルマを入れて敷地内で転回できる必要があった。道路側(北側)に駐車スペースを確保した上で、取り回しのことも考えると、建物は敷地の南側に寄せて配置する必要がある。そうなると隣家からの南面の離れは、あまり余裕を持って取れない、ということになる。そして、設計条件として大きく作用したのは子供4人分の個室を「できるだけ条件を揃えて」配置するということだった。今は、まだ小さなお子さん達なので、当初はある程度同じ空間でも良いけれども、将来的には個室に区切って使えるように考えなくてはいけない。そのために必要な最低限のスペースを確保する必要があったのだ。
 
 南面する居室群に必要な幅を、大きく取るには、敷地に対して斜めに配置することが有効であった。そうして確保した12.4mの間口に、4つ(当初は2つ)の子供室と主寝室を並置した。
 
そして、南側境界線までの距離がないことから、建物の4つの角を「抜け」の取れる部分として計画していった。テラスに面した南東部分は大きめの庭として、南西側は縁を介した見る庭として、北西側はユーティリティースペースに、そして北東のコーナーはアプローチ兼クルマの転回スペースに供されることとなった。
 
設計条件のなかには、夏は風が通れば比較的涼しい気候であるため風が抜けていくこと、反面、冬の寒さは厳しいので暖かな住居となることが求められていた。ある程度大きな開口部で光も風も取り込みたいということも添えて。
 
そこで、主な居室を外壁に対して縁側的なバッファーで包んでいくことを考えた。リビングの南面に対しては、収納式の折れ戸が閉められることで。その他、玄関スペースやサロン、水廻りなど必要とされる機能空間も使い、熱環境的には、ほぼバッファーの内側になるように計画されている。それは2階の居室においても同様で、子供室は共用的なインナーテラスや廊下のスペースを経て内側に配置されている。そして、家全体の基礎下に設けられた土壌蓄熱式暖房によって得られる暖気を、できるだけ効率よく保持していくことを試みている。
 
生活そのものを「柔らかく包み込む」というのは、仕上げ材の選択のみならず、プラン形状にもあらわれている。キーとなる場所に曲面壁が挿入されているのはその現れである。柔らかい陰翳と包み込む形状は、大きなボリュームで構成された多角形プランの構造部分と重なり合い、対峙していくことで、様々な様相を呈していくことになる。それらをあるときは統御し、あるときは強くドライブさせていくことで構成された結果が建築空間として立ち現れている。
 

(廣部剛司)

 
 
建築概要
名称  :名取の多角形住居
所在地 :宮城県名取市
主要用途:専用住宅
主体構造:木造
規模  :地上2階
敷地面積:422.66㎡(120.8坪)
建築面積:126.76㎡(28.8坪)
延床面積:222.58㎡(67.20坪)
竣工  :2019年9月 
構造設計:有限会社 構造設計舎
施工  :株式会社田名部組

 
「包む」空間を求めて

 敷地は宮城県名取市の市街地、敷地そのものは大きいが、まわりを住宅に囲まれた旗竿形状である。
 
まず日常生活に必要とされる駐車スペースを最低2台分設け、旗竿敷地ゆえに、頭からクルマを入れて敷地内で転回できる必要があった。道路側(北側)に駐車スペースを確保した上で、取り回しのことも考えると、建物は敷地の南側に寄せて配置する必要がある。そうなると隣家からの南面の離れは、あまり余裕を持って取れない、ということになる。そして、設計条件として大きく作用したのは子供4人分の個室を「できるだけ条件を揃えて」配置するということだった。今は、まだ小さなお子さん達なので、当初はある程度同じ空間でも良いけれども、将来的には個室に区切って使えるように考えなくてはいけない。そのために必要な最低限のスペースを確保する必要があったのだ。
 
 南面する居室群に必要な幅を、大きく取るには、敷地に対して斜めに配置することが有効であった。そうして確保した12.4mの間口に、4つ(当初は2つ)の子供室と主寝室を並置した。
 
そして、南側境界線までの距離がないことから、建物の4つの角を「抜け」の取れる部分として計画していった。テラスに面した南東部分は大きめの庭として、南西側は縁を介した見る庭として、北西側はユーティリティースペースに、そして北東のコーナーはアプローチ兼クルマの転回スペースに供されることとなった。
 
設計条件のなかには、夏は風が通れば比較的涼しい気候であるため風が抜けていくこと、反面、冬の寒さは厳しいので暖かな住居となることが求められていた。ある程度大きな開口部で光も風も取り込みたいということも添えて。
 
そこで、主な居室を外壁に対して縁側的なバッファーで包んでいくことを考えた。リビングの南面に対しては、収納式の折れ戸が閉められることで。その他、玄関スペースやサロン、水廻りなど必要とされる機能空間も使い、熱環境的には、ほぼバッファーの内側になるように計画されている。それは2階の居室においても同様で、子供室は共用的なインナーテラスや廊下のスペースを経て内側に配置されている。そして、家全体の基礎下に設けられた土壌蓄熱式暖房によって得られる暖気を、できるだけ効率よく保持していくことを試みている。
 
生活そのものを「柔らかく包み込む」というのは、仕上げ材の選択のみならず、プラン形状にもあらわれている。キーとなる場所に曲面壁が挿入されているのはその現れである。柔らかい陰翳と包み込む形状は、大きなボリュームで構成された多角形プランの構造部分と重なり合い、対峙していくことで、様々な様相を呈していくことになる。それらをあるときは統御し、あるときは強くドライブさせていくことで構成された結果が建築空間として立ち現れている。
 

(廣部剛司)

 
建築概要
名称  :名取の多角形住居
所在地 :宮城県名取市
主要用途:専用住宅
主体構造:木造
規模  :地上2階
敷地面積:422.66㎡(120.8坪)
建築面積:126.76㎡(28.8坪)
延床面積:222.58㎡(67.20坪)
竣工  :2019年9月 
構造設計:有限会社 構造設計舎
施工  :株式会社田名部組

Photo
@Takeshi Hirobe